やさしい・いものプロジェクトを開催しました
産学官連携事業のやさしい・いものプロジェクトは、世界に類のない規模の高岡の鋳物産業の中に一般市民が入り、原型を使わない新しい方法の生型鋳造で思い思いの作品をつくり、それを市民に販売します。
今年度(令和2年度)は、コロナ禍の中で、三密対策を十分にして、7回実施しました。従来の開催会場である(株)能作の鋳造工場は、新型コロナウイルス感染拡大防止により使用できないため、参加者人数を減らして富山大学芸術文化学部の鋳造室で実施しました。
1回の参加人数は6名程度を限度として、三船先生はじめ芸文の学生の皆さんがサポートをしてくれました。
鋳型製作
熔解・鋳造
型ばらし(作品取り出し)
仕上げ
完成作品
(写真撮影:富山大学芸術文化学部4年生大橋美月)
三船先生のコメント
リピーターの参加者が増えてきました。参加された方が知人の方に紹介し、参加者が口コミで増え、40代以上の女性の参加が多くなっています。高岡工芸高校の生徒さんは、まとまって6名が2回に分かれて参加され、みなさんパワフルに作業をされました。中には一人平均鋳型2個のところ7個もつくる生徒さんがいて驚かされます。
作品の特徴
事前に何をつくろうか考えてこられる方が多いのですが、実際には鋳型砂を触ってその場で即興的にアイデアを出される方もいらっしゃいます。生型の鋳型を削ったり押しくぼめてつくる隙間に青銅を流すので、逆の形を想像しながら制作します。そのため、型から製品を取り出すまでどういう形になるかご本人にもわからないので、とてもおもしろいです。制約の多い生型鋳造法がアイデァ次第でいろんなことができる方法なので、個性的な作品が生み出されます。
展示即売会の企画
会場:オタヤ開発
やさしいいものPJは、高岡の地場産業である「鋳造」の作品を市民がつくり、販売することが条件で参加していただいています。一般市民の方がご自身の作品にご自身で値段を付けて市民に販売することは、つくるおもしろさ、購入する楽しさが生まれます。
高岡銅器として将来ビジョン
中国では4千年以上、日本では2千年以上の歴史がある鋳造の銅器ですが、鉄やアルミニウム、プラスチックなどの便利な素材が登場し、さらに生活スタイルの変化にともない銅器の需要は減少してきました。市民の方々が制作するやさしいいものPJの作品は、これまでの銅器の歴史とは異なる新しい流れになります。従来の同一品種大量生産型の生型鋳造法とは異なる多品種一品生産型のやさしいいものPJの作品は、高岡銅器の一つの新しい方向を示しています。
地域活性化への貢献
各地に工芸の地場産業は多くあります。一般市民が、その製作現場に入り込むことはありませんでした。コロナ禍以前の第1回、2回は当初の計画通り(株)能作の製作現場で鋳型をつくり鋳造しました。全国でも、世界でも高岡銅器ほどの鋳造の大きな産業の地はありません。地場産業の高岡銅器で、市民と企業が結びつきこれまでには無かった新しい動きが始まることを期待しています。こういった活動は急がずゆっくり進めることが重要ではないかと思います。
リピーターの方が増えていますので、やがてインストラクターとして活躍頂けることを期待します。